【迷走する代替案】イージス・システム搭載艦の建造費見送りへ、運用開始は27年度以降【防衛省】
防衛省は、導入を断念した陸上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」の代替となる「イージス・システム搭載艦」をめぐり、8月末に取りまとめる2022年度予算概算要求に建造費の計上を見送る方向で調整に入った。
運用や設計に関する方針が定まっていないことが理由。政府関係者が7日、明らかにした。
同省は、陸上イージスに搭載予定だった米ロッキード・マーティン社製のレーダー「SPY7」を、同艦に転用する方針。このため、塩害対策などの改修費用については、概算要求に盛り込む。
大型艦艇の建造には、5年程度の期間が必要とされる。建造費の計上が遅れることで、同艦の運用開始は27年度以降になりそうだ。
そもそもは「政治案件」だった
イージス・システム搭載艦は、防衛省にとって最大の鬼門だ。
そもそも配備断念したイージス・アショアは、安倍晋三前首相がトランプ前米大統領に米国製兵器の購入を迫られ、「爆買い」を決めた政治案件のひとつ。秋田市と山口県萩市への配備を計画したが、推進装置が自衛隊の演習場外に落下する問題の解消に2000億円以上の追加費用が必要とわかり、配備を断念した。
その代替策として、地上に置くべき大型レーダーのSPY7をイージス護衛艦「まや」型に搭載することとしたため船体が大型化し、1隻あたり「2400~2500億円以上」と「まや」型よりも最大766億円も高騰する。差額だけで汎用護衛艦が1隻建造できるほどだ。
米海軍が最新のイージス艦に搭載したレーダー「SPY6」を採用するのが合理的だが、防衛省はSPY7の開発・製造をめぐって米国との間で1700億円超の支払い契約を結んでおり、違約金の支払いを避けるためにSPY7の採用に固執した。
防衛省は今年4月、イージス・システム搭載艦の技術支援役務を公募。参加条件に「最新の多胴船の設計・製造等の経験を有すること」を挙げ、双胴型や三胴型の艦艇も想定していることをうかがわせた。
海上自衛隊は双胴型の音響測定艦「ひびき」型を保有しているが、波に強く安定している一方、速力が遅いという難点がある。
防衛省幹部は「いろいろ検討してみようということ。イージス護衛艦『まや』型の大型化をあきらめたわけではない」という。
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