【陸上イージス代替案】地上レーダー「SPYー7」異例の転用で新造艦のコスト見通せず【防衛省】
防衛省は秋田、山口両県への配備を断念した陸上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」に代わるイージス・システム搭載艦のレーダーに、米ロッキード・マーティン社製の「SPY7」を採用する方針を公表した。アショアで選定した地上用のレーダーを艦上用に転用する異例の試みだ。
競合したレイセオン社製で、米海軍が採用したレーダーSPY6と比較。米側の説明を根拠にSPY7が性能・価格面などで優れると判断したが、地上用レーダー搭載による船体の大型化などコスト上昇のリスクも抱える。昨年6月のアショア断念から1年が経過したが、代替策の運用構想や総額も固まっていない。
「SPY7の利活用の方針が適切と改めて確認できた」。岸信夫防衛相は記者会見でこう語り、米国防総省ミサイル防衛局や米海軍から提供された情報に基づき、転用を判断したことを強調した。ただ、SPY7はロッキード社から代理店(三菱商事)を通した輸入調達になる。米軍の装備品を調達する有償軍事援助(FMS)と違い、米政府は契約履行上の責任を負わない。
日本列島を弾道ミサイルから守る「目」となるSPY7は、米アラスカ州に配備予定の米本土防衛用の長距離ミサイル警戒レーダー「LRDR」の小型版だ。防衛省は「LRDRの試験成果を踏まえ設計・製造が進められている」とするが、SPY7とLRDRでは電波を発信するブロックの数が異なる。
探知・追尾能力の試験費用は日本が負担。迎撃ミサイルを使った実射試験の金額は未確定だが、2隻で5000億円超ともされるイージス・システム搭載艦の建造費に加算される。
海上自衛隊関係者によると、イージス・システムのレーダーは全周監視できるよう艦橋構造物の側面4カ所に設置するため、重心が高くなり、波による揺れの影響を抑える設計も必要になる。SPY7は既存のイージス艦レーダーやSPY6より重い。
防衛省は5月、船体設計の検討に必要な専門的知見を得るため、技術支援名目などで三菱重工業や三井E&S造船などと契約。契約額は計約16億円に上る。
採用に当たっては、ロッキード社との契約を解除すればこれまでにSPY7導入を前提に投じた700億~800億円の経費が回収できなくなることも考慮された。同省内では「もはや引き返せず、SPY7の選択しかなかった」とのささやきも漏れる。
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